原子力規制庁の技術評価は信頼できるか？圧力容器の照射脆化予測法をめぐって

摘要

原子力規制委員会は2016年2月24日，関西電力高浜原発1，2号機について「安全対策は新規制基準を満たす」と認めた．40年を超える老朽原発の新基準適合が認められたのは初めてである．今年7月の運転延長認可の期限までに必要な許認可が出されれば，60年までの運転が可能になる．原子力規制委員会はそのつもりで審査を進めているようである．古い原発は，機器や配管，配線，建屋などにおいてさまざまな経年劣化が起こるが，とくに原子炉圧力容器の照射脆化が懸念される．高浜原発1号機は，監視試験片で99°Cという高い脆性遷移温度が観測されており，安全性に大きな不安がある．原子炉運転中に何らかの不具合が生じて緊急冷却される際，熱応力により破損する危険があるからだ本誌の昨年2月号に，原子炉圧力容器の脆化予測法に関する問題について寄稿した．本稿は，この問題に関連するその後の経緯を述べる．