「結晶性高分子」街道初めてのぶらり旅

摘要

身の周りの金属材料をみると，数ある金属元素のうち合金としないで単一の金属として利用されているものは金，銀，白金，銑鉄，ニッケル，タングステン…など十種類あまりに過ぎず多くは合金である?合金は含まれる金属の種類とか混合量によって単一金属とは違った性質に変わる．単一金属では得られない性質を作り出すのが合金化する目的である?高分子材料でもまったく同じ考え方で二種類以上の高分子を一つの系の中に取り入れて単独高分子では得られない一味違った性質，さらにその高分子の性質までも変えてしまうような材料開発が進められている．これまで見てきたように高分子結晶は長い分子鎖で作られている?A，B二成分の高分子を混合したとき，合金が作る固溶体とは違ってA高分子結晶の格子点をB高分子の分子鎖で置換したり，A結晶格子の中にその構造を乱さずにB高分子が侵入したりすることはできない?しかし長い高分子鎖の中にほかの高分子鎖を様々な方法で合成化学的に導入して合金に対応するアロイ的な共重合物として多成分系高分子を作ることができる?鉄クローム，ニッケル合金が世にでて一世紀，はるかに遅れて生まれた合成高分子が合金まがいの多成分高分子材料として市場にでるまで多くのことを金属学に学hだ?金属の組鼠破壊学を手本として合成化学，物性面からの開発努力によって多成分の単純な混合物としての「ブレンド」から異分子どうしが化学的に結合されときには成分高分子の各々がもつ性質をまったく変えたような共重合体まで「アロイ」注1）ともいえる高分子素材が生まれてきている．金属の場合には合金として希望の性質を状態図によって設計することができるが，多くの高分子系では成分間の相溶性をはじめ様々の厄介なことがあって状態図らしきものを作ることは難しい?そこで多成分高分子系の成分高分子の種類や混合割合を変えてみて，希望の物性との間の関係を試行錯誤で探究しながら高分子材料の改良，開発が続けられてきた．まずは「ブレンド」からみていこう．