鋼板塗膜の密着性に関する研究--鋼板塗膜の密着性に及ぼす表面処理方法と塗膜厚さの影響

摘要

鋼板塗膜の密着性に関る因子として塗膜界面の処理方法と塗膜厚さの関係を明らかにするため，汎用のアルキド·メラミン樹脂を用いた鋼板塗膜（シリカ含有量：30wt％）について，サイカス法により塗膜／鋼板の界面密着特性について検討した。 試験は塗膜界面を切削し，鋼板塗膜の厚さが塗膜鋼板面での剥離強さと塗膜の隠密辞さ等にどのような影響を与えるか検討した。 （1）「還元クロム酸＋シリカあり」の処理方法（A実験群）では，鋼板塗膜の厚さの増加に伴い塗膜の密着特性は増大する。 しかし，「還元クロム酸＋シリカなし」の処理方法（B実験群）では，鋼板塗膜の密着特性に塗膜厚さの影響は見られなかった。 このことは「還元クロム酸＋シリカなし」の処理方法では，塗膜の厚さを増大させても鋼板の表面処理方法にシリカが介在しないため，塗膜との界面の密着特性に塗膜厚さの効果が現れないことが明らかとなった。 （2）鋼板塗膜のせh断強さはA群，B群の試験体とも鋼板塗膜の薄い10mu mのもが一番大きな値を示した。 しかし，A群の試験体は塗膜厚さが増大するに伴い，塗膜のせh断強さは低下した。 一方B群の試験体では塗膜のせh断強さは塗膜厚さ20メェmで一旦低下するが，塗膜厚さ3mu mで，また僅かばかり増大することが示される。 このことは鋼板塗膜のシリカ含有量が30wt％と高いために，塗膜厚さが10mu m程度あれば塗膜の破壊強さは適度の変形に耐えることができ，塗膜の特性が発揮されるが，膜厚の増加に伴い，塗膜の剛性が増大し破壊強さの低下を生じると考える。 したがって，このことは塗膜の破壊強さは界面の密着性，塗膜のシリカ含有量などにより影響を受けるので、塗膜厚さは余り必要以上に厚くしても塗膜の破壊防止には効果の無いことが示唆される。