高圧水素ガス雰囲気に曝露したオーステナイト系ステンレス鋼の疲労き裂進展挙動と水素侵入特性

摘要

これまで疲労強度特性に及ぼす水素の影響を調べるには，SchusterとAltstetterの研究のように低圧水素ガス雰囲気中で試験を行うか，Inoueらや三好らの研究のように試験片中に陰極水素チャージ法などによって人工的に水素を導入する実験手法がほとhどであった。 しかしながら，燃料電池システムで想定される70MPa級の高圧水素ガス雰囲気に曝露された材料中に水素がどの程度侵入し，疲労強度特性にどのような影響を及ぼすかについては不明である。 そこで本研究では，高圧水素ガス環境に曝露したオーステナイト系ステンレス鋼中への水素侵入特性を調べるとともに，疲労き裂進展に及ぼす水素の影響とマルテンサイト変態の関係を明らかにすることを目的とした。 さらに，オーステナイト系ステンレス鋼中の水素の挙動に及ぼすマルテンサイト相の影響を明らかにするため，予ひずみを与えたオーステナイト系ステンレス鋼を高圧水素ガス雰囲気に曝露して，水素侵入挙動を調査した。