極低炭素マルテンサイト鋼の再結晶挙動に及ぼすボロンの影響

摘要

火力発電プラント等で使用される耐熱鋼のクリープ強度を高める目的で，その基本組織であるラスマルテンサイト組織の熱的安定性を向上させようとする試みが近年盛hになされている。 本来，ラスマルテンサイト組織は，高密度の転位やラス·ブロックなどの微細粒組織を有するがゆえに熱的に不安定であり，高温では，転位の再配列や消滅，ならびにラス境界やブロック境界の移動が生じてマルテンサイト（以下，α′）組織の回復が進行する。 とくに，析出粒子の量が少ない極低炭素α′鋼においては，無負荷での焼戻しだけでも旧オーステナイト（以下，γ）粒界やパケット境界の張り出しによる不連続再結晶が生じ，著しい軟化を引き起こすこともわかっている。 したがって，耐熱鋼のラスα′組織を高温で安定に維持するには，M{sub}23C{sub}6型炭化物やMX型炭窒化物等の析出粒子により転位や粒界をピン止めし，これらの移動を妨げて回復や再結晶を抑制することが重要となる。