プロセスシミュレーションソフト(SIM)活用による：プラントのエネルギー効率改善－システム導入によるエネルギー効率改善と経済性評価

摘要

1973年の第1次石油危機以前は，原油価格は長い間2.5ドル／バレルの水準が維持されていたが，第4次中東戦争，イラン革命，イラン·イラク戦争を経て，原油価格は一時期30ドル／バレルを超えた。 しかし，その後原油価格は2000年まで小康状態が続き，ほぼ20ドル／バレル以下の水準に沈静化した。21世紀に入ってからは一進一退を繰り返しながらも一貫して上昇気運に乗って，最近は50ドル／バレルを超え，60ドル／バレルを超える勢いである。このような原油価格の高騰は，プロセス産業に大きな影響を与え，価格上昇の都度省エネルギー対策すなわち省エネルギー投資が行われてきた。 当初，省エネルギーの対象は個々の装置であったのが，用役システム，工場全体，最近では企業の枠を超えてコンビナートに拡大されてきた。 さらに今後は，産業の枠を超えてその地域を含むことも視野に入れている。 これは単にコスト削減という意味だけではなく，地球温暖化対策の一環という意味もあるからである。 一方，わが国では何故か工学における「技術の経済性」の位置付けが低いといわざるを得ない状況である。 これは一時流行した"MOT" (Management of Technology)についても同じであって，一番重要なエンジニアリング·エコノミクス／フィージビリティ·スタディがカリキュラムに取り込まれることはなかった。 これは結果としての経済性は議論されても，技術開発の方向付けの手段としての「経済性評価」という意識がないからだと考えられる。 そこで本稿では，省エネルギー対策の技術的側面と経済的側面の両面から述べるとともに，シミュレーションの果たす役割についても述べることとする。