世界のタンタル資源と最近の開発状況

摘要

わが国では、タンタルほ中間生産物（タンタル粉、塊、フツ化物等）の形で輸入されている。 また、鉱山からの一次生産はタンタル供給の約30％であり、タンタル供給の主体は、二次的生産品である。 したがって、鉱床探査·開発プロジェクトは、わが国のタンタル供給に直接的な影響は少ないと考えられる。 しかし、リサイクルを除き、スズスラグからのタンタル回収量が大きく減少していることから、今後タンタルの供給に最も影響を与えるのは鉱山からの生産とみることができ、これらの動向を把握しておく必要がある。これまでみてきたように、鉱し山生産は、2003年には倍増し（図12）、新たな鉱山開発計画も進行中であることから、2003年には需給のバランスは回復すると考えられている。しかし、レアメタルは、労働争議、地域紛争、自然災害、投機対象等による供給不安を潜在的に抱えており、便用される量が少なくても、日本の多くの産業に欠くことのできない原料素材であり、急には代替できない用途を持っている。 また、消費量および生産量が少ないが故に、その供給不安は突発的に起こり、突然解消されるといった傾向をもつ。 そのため、ひとたび供給不安が起こると、急激な価格高騰を招き、その価格変動は、地質的な鉱量などの数字よりも、社会的、人為的な要因に左右されることが多い。その典型的な例が、昨年から今年にかけてのタンタル価格急騰にみることができる。 以上のようなレアメタル資源のもつ特性が、レアメタル鉱床の探査意欲を欠くひとつの要因にもなっている。しかし、レアメタル資源のほとhどを輸入に依存しているわが国としては、短期的な供給障害に備えレアメタル（特に'ハイテク'用レアメタル）備蓄事業の推進を図り、中長期的には、産業の進展方向を見据えながら、代替供給源となるポテンシャルの高い地域を把握しておく必要があると考える。