英国ISISでの高圧下中性子回折実験

摘要

2007年度完成を目指し，茨城県東海村に世界最強レベルのビーム強度を誇るパルス中性子線源が建設されている（J-PARC計画）。 完成すれば，日本における中性子科学研究の拠点となるだけでなく，世界からJ-PARCを利用する研究者が訪れることになるであろう。 我が国では，つくばのKEK-PFそして播磨のSPring-8において，放射光を利用した高温高圧下のX線回折その場観察実験が盛hに行われ，高圧下での物質の振る舞いから新しいサイエンスが築かれてきた。 しかし，重い原子に囲まれた軽い原子の位置や，等電子イオンの区別はX線回折では困難を極める。 中性子回折は，X線が苦手とする系で威力を発揮する相補的な研究手法といえる。 これは中性子が電荷を持たない中性粒子であるため（磁性材料でなければ）電子雲を素通りし，原子核と直接的に核散乱を起こして相互作用することに由来する。 J-PARC計画で建設されるパルス中性子線源に何らかの高圧発生装置を装備することができれば，我が国で培われた高圧研究のノウハウを活かしながら，高圧下X線回折その場観察では明らかにならなかった新たなサイエンスの局面を迎えることになるであろう。