内部抵抗加熱式ダイヤモンドアンビルセルを用いた鉄融点の決定

摘要

地球の中心に存在する核は，主に鉄でできていると考えられている。深さ5,100kmにおいて地震学的に観測される内核外核境界(ICB)は，溶融鉄と固体鉄が接している境界面であるため，その深さに相当する圧力(330 GPa)において鉄の融点が分かれば地球中心核の温度を制約することができる。そのため，高圧下において鉄の融点を決定する研究がこれまで数多く行われてきた。Boehlerはレーザー加熱式ダイヤモンドアンビルセル(LHDAC)を用いた先駆的な高温高圧実験を行い，最大200GPaにおいて鉄の融点を報告している。彼らは高温高圧下で試料内対流活動が視覚的に確認された点を融点として報告しており，その結果を外揷するとICBに相当する330GPaで鉄の融点は4,850±200Kとなる。その後も現在までLHDACを用いた研究は続けられているが，その結果は不幸なことにあまり一致していない。Shenらは液体からのX線散漫散乱，diffuse X-ray scatteringの観察を基にBoehlerに近い値を報告しているが，一方でAnzelliniらは同じ手法を用いて，DACを用いた研究の中で最も高い融点を報告している。