ショットピーニング加工によるオーステナイト系ステンレス鋼SUS304の残留応力に関する研究

摘要

本論文では，オ山ステナイト系ステンレス鋼SUS304にショットピーニング加工を行い，ショット粒硬さおよび投射時間の影響について，試験片深さ方向に対する硬さおよび残留応力の変化を中心に検討を行った。 さらに本鋼の初期硬さとショット粒硬さとの比と圧縮残留応力との相関性について考察を行った。 得られた結論は，以下のようにまとめられる。 （1）全てのショットピーニング加工条件において，表面およびその近傍で硬さが上昇し，圧縮残留応力が確認された。 その際，ショット粒が硬いほど表面硬さおよび硬化層深さは増加し，高い圧縮残留応力が得られた。（2）表面および最大圧縮残留応力は，ショット粒硬さ250HVの場合は，投射時間の長いものほど高い値を示した。 しかし，ショット粒が450HV，600HVと硬くなるにつれて，投射時間が残留応力に及ぼす影響は，次第に小さくなる傾向にあった。 （3）SUS304網の初期硬さとショット粒硬さとの比と圧縮残留応力の間には相関関係がみられた。 この相対硬さ比より，本鋼の表面および最大圧縮残留応力の推定が可能であると考えられた。最後に，本研究を遂行するにあたり貴重なご意見·ご討議をいただきました橋本技術士事務所·橋本宗到先生，ならびに本実験に全面的にご協力いただきました金沢大学大学院生（現：千葉職業訓練短期大学校制御技術科）·高橋茂信氏に深く感謝致します。