時間分解XAFSによる水溶液中の［Ru~(II)（bpy）_3］~(2＋)の~3MLCT状態の構造観測

摘要

金属錯体の光化学反応は過渡的に起こる現象であるため，レーザー光を用いた時間分解分光により主に研究が行われてきた.しかし，従来の分光法では，光化学反応過程で変化する分子構造の観測は困難であった.近年では，放射光X線パルスによる時間分解測定が一般的な手法となってきており，物質の光励起状態の構造や電子状態に関する研究が進展している.このようなX線を用いた時間分解測定の手法として，X線回折，散乱吸収法などがあるが，その中でもX－ray absoption fine structure（XAFS）は，液体，固体，気体と試料の形態を問わず，X－ray absorption near edge structure（XANES）から電子軌道の対称性，電子状態を，extended X-ray absorption fine structure（EXAFS）から局所的な構造情報を得ることができるという利点があるため，溶液中の金属錯体の励起状態を観測する手法として，発展を遂げている.本研究では，金属錯体の中でも色素増感太陽電池の典型的なモデルとされているRuthenium（II）-tris－2，2'，－bipyridine（［Ru~(II)（bpy）_3］~(2+)）の光励起状態を時間分解XAFSを用い観測したので，ここに報告する.