中枢神経系におけるL-カルニチンとカルニチントランスポーターの生理機能

摘要

L-カルニチンは,脂質代謝およびエネルギー産生の必須因子である.この分子は,長鎖脂肪酸のアシル基をアシルカルニチンとしてミトコンドリア内膜を通過させ,β酸化に関与する重要な生理学的役割を担っている.脳では,L-カルニチンおよびアセチル-L-カルニチンは,脳内エネルギー産生,抗酸化作用およびコリン作動性神経活動の調節や促進などの様々なメカニズムにより神経を保護する重要な役割を担っている.アセチルーL-カルニチンは,高齢者の慢性変性疾患の治療のために適用され,アルツハイマー病の認知機能障害の進行を遅くする成績が得られており,それらはミトコンドリア機能元進やコリン作動性神経活動の亢進などが関与している可能性がある.一方,アストロサイトは,大量のケトン体を産生することができ.アストロサイトが産生するヶトン体は,隣接した神経細胞に容易に取り込まれてエネルギー産生に利用される.したがって,L-カルニチンの取り込み機構は,アストロサイトにおけるケトン体産生の律速段階であると言える.いくつかのカルニチントランスポーターは,末梢組織に発現していることが知られている.この総説では,中枢神経系におけるカルニチントランスポーターの生理的機能および機能発現についてさらに概説する.