「金の糸」療法後の金属アレルギー症例

摘要

【はじめに】美容外科領域において注入物.埋入異物の歴史は古く,日本では戦後よりパラフィンゃヮセリンなどの混合炭化水素系物質から始まり,シリコン注入後の肉芽腫など多数の合併症例が報告された。現在でもポリアクリラマイドゲルなどの非吸収性注入剤の合併症の報告が後を絶たない。今回我々は若返り術として行われている「金の糸」埋入術の合併症例を経験したので報告する。【症例】症例は49歳,女性。主訴は顔面類部の紅斑であった。10か月前に美容外科クリニックで「金の糸」埋入術を顔面類部に受けた。術後3か月頃より類部の腫脹,硬結が出現した。術後5 か月時に前額部より排膿あり,抗生剤を処方されたが改善なく当科紹介受診となった。金属ァレルギーを疑い金属パツチテストを施行したところ,塩化金酸,塩化パラジウムで陽性を示した。【考察】美容医療における「金の糸」は肌のひきしめ効果や美白効果があり,また生体材料として金を用いる根拠はアレルギーを起こさないため安全であると謳っている。金でなくても異物反応は生じ,また金がァレルギ一を引き起こす物質であることは皮膚科 歯科領域から以前より数多く報告されている。アレルギーの治療としてアレルゲンの除去が必要になるが,金は皮下に断続的に存在し全摘出は現実的には不可能である。日本美容外科学会でも非吸収性異物の注入に対し啓発されているが, 「金の糸」もその性質から同様に注意されるべき異物と考える。