複数経路マルチキャストを利用した一対多ファイル転送へのゴシッピング導入

摘要

近年，クラウド化の進展によりデータセンタ間のデータの移動やコピーによるトラヒック量増加が問題となっている.そのため，ある送信者が持つ巨大なファイルを複数の受信者へ転送する一対多ファイル転送の効率化が求められている.そこで，転送ファイルを均等な長さのブロックに分割し，OpenFlow技術を用いて異なるブロックを複数経路で同時転送するとともにマルチキャストにより無駄な重複転送を防ぐことで各受信者の受信完了時間の短縮を可能にする複数経路マルチキャストを検討してきた.複数経路マルチキャストを利用した一対多ファイル転送では，複数のフェーズからなるブロック転送のスケジュールを設計するために，受信者の順序をパラメタとするあるアルゴリズムを用いて転送経路および経路へのブロック割当をフェーズ毎に逐次的に決定し，そのパラメタをランダムに変えて得られた複数のスケジュール候補の中から性能の良いものを選択する.本報告では，ゴシッピング（あるブロックをすでに受け取った受信者から未受信の受信者へ転送する受信者間転送）を導入し，その効果をシミュレーションにより評価する.未使用であったリンク帯域を有効利用することで，大多数の受信者の受信完了時間が下限値に近い値を達成するような理想に近いスケジュールが実現される.さらに，少ないスケジュール候補数（探索回数）の場合でもそのようなスケジュールが取得できることを示す.