地上／衛星共用携帯電話システムにおける移動平均を用いた重要通信優先チャネル率の重要通信呼量変動追従法の検討

摘要

衛星に大型のアンテナを搭載することで携帯端末で衛星と直接通信が出来る地上／衛星共用携帯電話システム（Satellite／Terrestrial Integrated Mobile Communications System；STICS）［1］が、大規模災害時の携帯電話サービスを供給する通信基盤として期待されている。著者らは、大規模災害時には重要通信の確保が非常に重要と考え、STICS衛星のチャネルに重要通信呼のみが使用可能な重要通信呼優先チャネルを設け、それ以外のチャネルを一般呼と重要通信呼で共有することを提案し、全チャネルに対する重要通信優先チャネルの率（PCREC：Priority Channel Rate for Emergency Call）を適切な値に設定することで、貴重な衛星のチャネルの利用率が高い状態で、重要通信の確保を実現できることをシミュレーションにより示した［2］。大規模災害時には、重要通信のニーズは普段と比べ強く、重要通信呼数は急激な時間変動が起こると考えられる。本報告では、この重要通信呼数の変動に対し適切なPCRECにする制御方法として、重要通信呼の発生数を一定間隔で観測し、移動平均を取り観測値を平滑化した値を用いて、予め計算しておいた当該の移動平均値に適切なPCRECになるように制御する重要通信呼数観測移動平均法を提案する。そして、計算機シミュレーションにより、移動平均算出観測数が小さいほど重要通信呼数の増加によく追従し重要通信の確保が実現できるが、チャネル利用効率が少し減少することを示す。