膵全摘術：一期的手術と二期的手術

摘要

膵癌に対する化学療法の進歩や，インスリン治療の進歩，手術?周術期管理の進歩により膵全摘の機会は増え，その安全性は高まっている。また，膵切除後の残膵に発生した腫瘍に対する残膵全摘の機会も増えている。本稿ではこれらの手術成績および問題点を振り返り，とくに手術の際に懸念される胃内容排泄遅延（DGE)について詳細な検討を行った。当科における残膵全摘例11例と膵全摘18例の手術成績を検証し，残膵全摘は膵全摘と比較して安全に施行でき，Clavien-Dindo IIIa以上の合併症の発生率はそれぞれ18%と11%であった。また，DGEを膵全摘例に5例認め，危険因子について検討すると，左胃静脈切離，脾動静脈切離，亜全胃温存の条件をすべて満たす例はDGEの発生率が高く，術前?術中に留意する必要がある。