術前診断が可能であった下部胆管に発生した腺扁平上皮癌の1例

摘要

要約：症例は67歳男性。 腹痛を主訴に近医を受診し，閉塞性黄疸を指摘され，精査加療目的に当院紹介入院。 MRCP，ENBD造影にて下部胆管に不整な閉塞像を認めた。 胆汁細胞診で腺癌細胞の集塊と肩平上皮癌細胞を検出され，下部胆管腺扁平上皮癌の診断で幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を行った。 病理所見では腺腔形成を有する腺癌と角化を伴う肩平上皮痛が混在しており，腺扁平上皮癌と診断した。 神経周囲浸潤が高度であったため，補助療法として肝門部胆管に放射線照射を行った。 術後8カ月の現在，再発なく生存中である。 肝外胆管癌のうち腺扁平上皮癌は非常に稀であり，術前診断は困難であるが，本症例は胆汁細胞診にて術前診断が可能であった。 一般に胆管原発腺扁平上皮癌は，病理組織学的な特徴として脈管侵襲，神経浸潤が著しい傾向にあり予後は不良である。 切除可能な症例に対しては手術が第1選択であるが，周囲組織の十分な合併切除が重要と考えられた。