ESDで広範囲切除断端陽性となった未分化型胃癌の1例

摘要

患者は80歲代後半，女性.主訴はなし糖尿病で通院加療中であつたが，健診目的で施行した上部消化管内視鏡検査で異常を指摘された.胃体下部前壁に比較的明暸な境界を有する陥凹性病変を認め，早期胃癌O-IIc型と診断され，陥凹部からの生検では印環細胞癌が証明された. NBI拡大観察では，病変中央部の陥凹に一致しcorkscrew patternを認め， 陥凹周囲の粘膜には異常を指摘し得なかった.高齢であるため十分なィン フォームドコンセントを行ったうえでESDを施行した.十分なフリ一マージ ンを確保してESDを施行したカ气切除病理組織では病変中央の陥凹部で は印環細胞癌が粘膜全層に，陷凹周囲では正常上皮を残しながら粘膜中 層以深を癌が浸潤したため，術前のNBI観察では水平方向への病変の 拡がりを捉えることができなかった〔gastric cancer Type 0-IIc+IIb, UL(-)， sig, por2, pTlb2 (SM2:l,OO0mum), lyl,vO, INFc, int, HMl, VMO)]. NBI併用拡大内視鏡検査にも限界があり，通常内視鏡検査を軸とした総 合的な所見および症例に応じて術前の病変周囲からの陰性生検による確 定診断が必要不可欠であると考えられた.