内頚動脈閉塞が原因であった眼虚血症候群の1例-内頚動脈閉塞による血管新生緑内障の診断と組織学的特徴一

摘要

内頚動脈閉塞に起因する血管新生緑内障の1症例における診断と組織学的特徴について検討した．今回，我々は糖尿病を基礎疾患に有し，左眼ぶどう膜炎を初発症状とした左内預動脈閉塞に起因する血管新生緑内障を経験し，その診断方法について検討した．また，本症例で線維柱帯切除術を施行し，得られた組織片を光学顕微鏡，透過型電子顕微鏡観察ならびにvon willebrand因子に対する抗体を用いた免疫組織学的染色標本の観察を行い，その組織学的特徴について検索した．眼底カメラを用いた左眼の蛍光隅角造影検査では，虹彩ならびに隅角のルベオーシスが存在し，蛍光眼底造影検査では右眼の増殖前糖尿病網膜症とは明らかに異なり，強い脈絡膜循環遅延と動静脈壁のフルオレセインによる染色を顕著に観察できた．組織学的所見では周辺虹彩前癒着は起こっておらず，線維柱帯の間隙を新生血管が占領し，一部にはSchlemm管の閉塞を起こしていた．本症例の診断には，眼底カメラを用いた蛍光隅角造影検査ならびに蛍光眼底造影検査が極めて有用であった．隅角鏡と組織学的所見から緩徐に進行する血管新生緑内障では，周辺虹彩前癒着は顕著には起こらず，線維柱帯の間隙を新生血管が占領し，一部にはSchlemm管の閉塞を起こすことが特徴と考えられた．