同種造血幹細胞移植後の移植片対宿主病と卵巣機能不全の関連

摘要

同種造血幹細胞移植後の卵巣機能不全による不妊は，若年女性の移植後のQOLに影響を及ぼす深刻な合併症 である。これまでは，移植の骨髄破壊的前処置で用いられる大量化学療法や全身放射線照射による卵巣への毒 性によって不妊が生じると考えられてきた。しかし，強度減弱前処置による移植が普及した現在，移植後の卵 巣機能不全の原因が全て移植前処置に帰するのかどうか，再検討が必要である。われわれは最近，マウスモデ ルを利用した研究で，卵巣が移植片対宿主病(GVHD)の標的となり，GVHDによる卵巣予備能の低下によつ て，移植の前処置毒性とは独立した不妊が生じることを発見した。こうした知見は，移植前に強力な化学療法 を必要としない，再生不良性貧血などの良性血液疾患の移植後の管理を考える上で重要な知見である。本稿で は，われわれの研究を紹介するとともに，移植後の女性不妊に関する最近の知見をまとめることとする。