隣接臓器浸潤肺癌における術前導入療法と術後補助療法の意義

摘要

【目的】隣接臓器浸潤T3肺癌における術前導入療法と術後補助療法の意義を探る．【方法】1990～2014年の病理病期pT3肺癌全326切除例を対象とする．術前療法（化療＋放治またはそのどちらか）施行53例，術後療法施行100例．T3肺癌では浸潤が胸膜までにとどまるか気管支へ浸潤するものT3 pleura/broncus（p/b）と，胸壁軟部組織，肋骨，心膜，横隔膜に浸潤するものT3 deeper structures（ds）とで予後が大きく異なることを考慮する．【結果】以下5生率を％で示す．pT3dsN0-1群で術前治療を行っていない場合，完全切除＋術後治療あり63％（n=18），完全切除＋術後治療なし30％（n=59），不完全切除＋術後治療あり19％（n=14），不完全切除＋術後治療なし0％（n=9）（p＜0.01）．pT3dsN0-1群で術前療法を行っている場合，術前療法の組織学的効果が高いEf2-3群は69％（n=15）で，導入療法なし群33％（n=100）やEf0-1群21％（n=14）（p=0.02）より有意に予後良好であり，術後治療については，なにも行われていない完全切除例の予後が良好であった．pT3anyN2群では，完全切除＋術後治療あり37％（n=19），完全切除＋術後治療なし27％（n=29），不完全切除例6％（n=16）（p＜0.01）であった．予後のよいpT3p/bN0-1群でも不完全切除で術後治療が行われていないと5年生存者はいなかった．【結論】pT3dsN0-1群で術前治療を行っていない場合，完全切除でも不完全切除でも，術後治療が行われたものは行っていないものより予後が期待できる．pT3dsN0-1群の術前療法ではEf2-3が得られた場合，導入療法を施行しなかった群に比べ有意な予後改善が期待できる．pT3N2群は浸潤臓器によらず予後不良であるが，完全切除＋術後治療を行った群で4割程度の5年生存が期待できる．