末梢小型肺癌（画像上2．0cm以下）に対する拡大区域切除術 その適応と手術成績

摘要

末梢小型（CT上2cm以下）非小細胞肺癌に対する拡大区域切除および縦隔郭清術の適応とその手術成績を検討した．まずretrospectiveに，1984年5月から1993年9月まで，当科で肺葉切除ND2を行った，腫瘍径2cm以下（国定標本）末梢型非小細胞肺癌36例を対象に，腫瘍占拠部位と肺内リンパ節転移および肺内転移（pm）について病理組織学的に検討した．その結果拡大区域切除および縦隔郭清術でも，術中所見と迅速病理検査を多用すれば，癌遺残の可能性は極めて少ないものと判断された．次にprospective studyとして1993年10月から1999年12月まで，CT上2cm以下の末梢型非小細胞肺癌28例に対して拡大区域切除および縦隔郭清術を施行した．その手術成績，再発率，再発形式，術後呼吸機能変化について，前述の標準的肺葉切除術ND2と比較した．拡大区域切除および縦隔郭清術の5年生存率は72」8％，再発率（p－Stage IA）は317％，標準的肺葉切除術ND2の5年生存率は75．4％，再発率（p－Stage IA）は83％で両群間に有意差を認めなかった．術後呼吸機能変化については，拡大区域切除および縦隔郭清術は標準的肺葉切除術ND2と比べて，呼吸機能低下が軽度で回復も早期にみられた．今後さらなる症例の蓄積が必要であるが，拡大区域切除および縦隔郭清術は末梢小型肺癌（2cm以下）に対する有用な術式と考えられた．