傍腫瘍小脳変性症を伴う小細胞肺癌の1手術例

摘要

背景·小細胞肺癌に伴う傍腫瘍小脳変性症の報告は近年増加傾向にあるが，同様の症例に対して手術を施行した報告は少なく，手術後の腫瘍随伴症状の変化に対する報告はない.症例.56歳男性.2009年2月より徐々に浮動性めまい，歩行障害，嘔気，ろれつ障害が増悪し，当院神経内科を受診し，小脳失調と診断された. 精査により右肺中葉の結節影を認め，気管支鏡検査で小細胞癌の診断であつた.リンパ節転移及び遠隔転移は認めなかった.血清，及び脳脊髄液中抗Hu抗体陽性であり，傍腫瘍小脳変性症及び小細胞肺癌（eTINOMO stage IA)と診断した.右中葉切除及び2群リンパ節郭清を施行したが（pTlN2M0 stage IIIA)，術後1ヶ月間は神経症状の改善を認めなかった.その後免疫グ口ブリン大量投与療法及び補助化学療法（CDDP + VP-16)を施行し，免疫グロプリン療法開始後から軽度の神経症状の改善を認めたが完全な改善ドは至らなかった.結論.傍腫瘍小脳変性症を合併した小細胞肺癌の治療例を経験した.完全切除を行ったが，神経症状の改善を速やかには認めなかった.術後，免疫グ口ブリン投与及び補助化学療法を追加し若干の改善を認めた.