日本応用心理学会第84回大会

摘要

2017年8月26日?27にかけて，日本応用心理学会 第84回大会が立正大学品川キャンパスにて開催され た。大会委員会企画シンポジウムと自主企画ワーク ショップ，学会研修会に加え，ポスターセッションと 小規模な構成ではあったが，研究報告は応用心理学会 らしく，社会，産業?組織，教育，臨床，神経?生理 など多岐に渡っていた。学会賞記念シンポジウムで は,3人のシンポジストが登壇した。九島紀子氏（立正 大学大学院）は，自身が長年美容業に携わってきた経 験をもとに，メイクといった専門家の経験と感覚で行 われている技術に関して，言語化および基準の作成を 試みた研究を紹介していた。基準として，女性的一男 性的の軸，幼稚的一成熟的の軸を設定し，幼稚的で女 性的なメイクは若い印象を受けやすい，男性的なメイ クは男性からは恋人にはしたくないと評価されるが， 女性から友人にしたいという評価を受けるといった知 見は興味深かった。仲嶺真氏（筑波大学）は，いわ ゆる「ナンパ」と呼ばれる街中での異性への声かけと， 声かけ後の会話の進展の研究について発表を行ってい た。男女共に街中での異性への声かけに対して不快に 感じている一方で，男性から女性に対する声かけでは， シャイな人物をイメージさせるような身体的表出，「こ れ落としませhでしたか？」等カモフラージュを利用 した声かけはその後の会話につながりやすいといった 知見が紹介された。一方，ジョークを利用した声かけ は不快に受け取られやすく，会話につながらないと いった結果も紹介されていた。このように，現実場面 での人間の様々な行動を，心理学の知見をもとに深く 掘り下げ還元していくことが，応用心理学の醍醐味と もいえるだろう。坂井信之氏（東北大学）は，齊藤勇 記念出版賞の受賞にあたり，自身の著書「香りや見た 目で脳を勘違いさせる毎日が楽しくなる応用心理学」 から抜粋し，同じ砂糖水でも香料によって味が異なるように感じる，赤く着色した白ワインの味を赤ワイン と間違えるといった知見を紹介していた。応用心理学 では，日常生活や産業現場に密接な問題を取り扱うこ とが多いため，このようなアウトリーチ活動をより積 極的に行っていく必要性を感じた。