動脈結紫術と塞栓術後に胸壁から新生血管形成を認めた気管支動脈蔓状血管腫の1剖検例

摘要

症例は33歳女性，妊娠21週．19歳時に気管支動脈書状血管腫と診断され開胸下に気管支動脈結紮術を施行された．その後も喀血を繰り返し，その度に気管支動脈塞栓術もしくは保存的加療にて軽快していた．9度目の再喀血にて当院へ入院となり右側よりの出血が疑われたため，片肺分離換気下にて3度にわたり気管支動脈塞栓術を施行し出血は収まった．しかし，細菌性肺炎による敗血症を合併し第12病日に死亡した．剖検では以前の開胸手術創に沿って肺と胸膜との強固な線経性癒着を認め，癒着組織を通じて肋間動脈·鎖骨下動脈より新生血管が拡張·蛇行を伴って肺内に侵入しており出血源となっていた．本疾患に対する姑息的な外科的処置は壁側臓側胸膜間の癒着，そこを通じて肺内へと侵入する新生血管の増生を招き，さらなる出血病変を生む可能性が示唆されるためできるだけ避けるべきと考えられた．