75g経口糖負荷試験による妊娠糖尿病診断基準値の再評価

摘要

目的:現在妊娠糖尿病(以下GDM)の診断基準値は国際的に統一されていない.日本産科婦人科学会(以下日産婦)およびGDM国際ワークショップ会議(以下国際会議)が提案している75g経口糖負荷試験によるGDMの診断基準値は,いずれも妊婦における空腹時,負荷後1時間,負荷後2時間における血糖値の平均+2SDで決められている(それぞれ100-180-150,95-180-155mg/dl).しかし,両者は近似しているものの,前者は後者より空腹時値は5mg/dl高く,2時間倍は5mg/dl低い.そこで自験例によりGDMの診断基準値を再評価することを試みた.方法:広島市立安佐市民病院産婦人科で分娩した7,147例において妊娠30週前後で実施した75g経口糖負荷試験の血糖値の平均+2SDと,児の出生体重を調べることにより診断基準値の妥当性を検討した.成績:75g経口糖負荷試験の血糖値の平均値+2SDは日産婦の診断基準値に比較し1時間値,2時間値については大差ないが空腹時値が著しく低値であった.日産婦の診断基準値を満たしGDMとして加療を受けた群では児の平均出生体重の増加はないのに対して,このような加療を受けなかった国際会議の診断基準値のみを満たした群での平均出生体重は有意に重かった.結論:75g糖負荷試験の平均値+2SDを根拠として妊娠糖尿病の診断基準値を定める場合には,日本人の妊婦においても空腹時値は国際会議の診断基準値が支持される.