産科婦人科の新しい診療領域 女性医学の意義とその展開

摘要

高齢化が現実の問題へと進行し，わが国の総人 口が減少の方向へと動き出した昨今，産婦人科領 域において女性医学と命名された新しい診療領域が提案されてきた.女性医学は「女性のQOLの向 上を目的に，女性に特有な心身にまつわる疾患を， 主として予防的観点から取り扱う産婦人科の専門 領域」と定義され，その業務は女性のへルスケア であり，昨年暮れには女性のへルスケアが産婦人 科領域のsubspecialtyのひとつであることが日 本産科婦人科学会理事会において正式に承認され た.女性医学は更年期医学にルーツを置き，そこ で学hだ予防医学を発展させるために生まれた診 療領域であるが，その意義や診療内容に対する理 解は決して高いとは言えないのが現状である.こ れをどのように位置づけ展開して行くかについて は，産婦人科全体の診療内容に関わる大きな課題 である.本稿では，わが国の女性のもつ疾病の全 体像を俯瞰しつつ，女性医学の意図するところ，ならびにその実践について解説する.