シンポジウム3「精液検査の標準化」3）精子運動性検査法の標準化

摘要

精子の運動は生物の運動様式の重要な例として，筋収縮などとともに最も研究の進hだ分野で，細胞生物学関係の研究者のみならず，流体力学の研究者などをも交えた活発な研究が行われている．さらに，最近，内分泌かく乱物質の男性生殖機能への影響や新規薬物の治験のための指標としても利用されている．精子の運動を調べる方法として，現状ではWHOの推奨する目視による検査法が広く行われている．測定者が位相差顕微鏡を覗きながら，精子の運動を以下のaからdまでの4段階に分類し，それぞれを百分率で示す．a：速く前進する精子，b：遅いが前進する精子，c：動くが前進しない精子，d：不動精子．しかし，この方法については，定義の曖昧さや測定者の判断の違いなどにより，客観的な結果を期待できないなどの問題が以前から指摘されている．事実，最近精液検査の国際調査を行うに当たり，欧米ではそれぞれ独自のマニュアルを作成しそれに従って精液調査を行っているが，その結果，目視法の問題についても研究が進み，この問題点の詳細が明らかになってきた．結論として，目視法では測定者をどのようにトレーニングしようとも精子の運動を正確に測定することは困難であるという認識に達している．