職場不適応にて明らかとなった成人高機能広汎性発達障害症例アスペルガ一障害の社会適応をめぐって

摘要

近年精神医学の中で発達障害が注目されてきているが,成人を診察している精神科医にとって成人の発達障害を診る機会は少なく,看過されている症例も多いのではないかと思われる。 今回われわれは,成人になり職場で不適応を起こしたために診断に至った成人高機能広汎性発達障害3例を経験した。 2症例はアスペルガレ障害, 1症例は特定不能の広汎性発達障害と診断されたが,いずれも職場でのコミュニケーションに問題があり,不適応に陥っていた。 成人発達障害は,患者および家族の年齢が高いため詳細な発達歴の聴取がやや困難であること,小児期から発達障害特有の病像が変化することなどから,諺断において難しい点があることを指摘した。 また成人発達障害では,社会適応するためには周囲の理解とサポートが必要なこともさることながら,彼らの能力を生かし,専門性を身につけたり資格を持ったりすることが有用であることを論じた。