精神障害者小規模作業所の入院防止機能と利用者の就職意欲にかかわる要因の分析

摘要

精神障害者小規模作業所（以下，作業所）の利用者を対象としたアンケート調査の概要を示し，調査結果より作業所の入院防止機能と利用者の就職意欲に影響する要因の分析を行った。 分析対象者は川崎市内の全作業所のうち，アルコール関連の3作業所を除く18作業所を利用する老343名であり，これは平成16年1月現在の18作業所の利用者総数431名の79.6％に相当した。 利用者の平均年齢は44．6歳で，6割強が男性であり，疾患分類では統合失調症が全体の3分の2を占めていた。 また初診時の平均年齢は25．9歳，通算入院期間は平均26.2カ月，利用後の入院期間は平均2.3カ月であった。 作業所利用開始時を境とした年平均の入院回数および入院期間の前後比較では，どちらも利用開始以後で有意に減少していた。 また利用開始以前の年平均入院期間が「短い群」と「長い群」に分割した分析において，「長い群」で利用開始以後の年平均入院期間が有意に減少していた。 さらに1回の入院あたりの平均入院期間についても，利用開始以前と比べ開始以後で有意に減少していた。 これらのことより，作業所の入院防止機能は作業所利用開始以前に豊富な入院歴を有する老に対してより有効に働き，また入院した場合においても入院期間を短縮する機能を果たす可能性が示唆された。 さらに，将来の就職希望に影響する要因を検討する目的で多重ロジスティック回帰分析を行ったところ，初診時より調査時点までの経過年数が20年以上および利用期間が5年以上の者で，有意に就職を希望する者の比率が低かった。 利用者の就職意欲は作業所利用期間が長い老で低下する傾向にあり，時宜を得た就労支援の必要性が考察された。