精神科医療における言語聴覚士の役割と課題-認知症患者のコミュニケーション支援の観点から-

摘要

認知症のコミュニケ—ション障害について，2つの視点から，言語聴覚土の役割と 課題を述べた。第1の視点は認知症の原因疾患別にみたコミュニケーション症状である。 前頭側頭葉変性症にみられる原発性進行性失語は，3つのサブタイプおのおのに脳の局在 に対応した特異的な症状がある。確定診断の補助と適正なリハビリテ―ション実施に向け， 言語聴覚士による早期からの介入が望まれる。第2の視点は原因疾患横断的な特徴に着目 したコミュニケーション症状の類型化である。類型ごとの特徴をふまえた支援，特に，聴 覚障害に対する補聴と，自伝的記憶を活かしたメモリーブックを用いた介入について自験 例を紹介し，効果と課題を論じた。他者と共存し社会を形成して生きる私たち，コミュ二 ケーシヨンは不可欠である。精度の高い観察や検査によって残存機能を抽出し，生活の場 で活用?展開して認知症患者の人生の質に寄与すること力5，言語聴覚土に課せられた大き な役割である。