-側下肢遠位部に限局する識別感覚障害を呈した中心後回梗塞の1例

摘要

右下肢遠位部に限局する感覚障害で発症した中心後回梗塞の70歳,女性例を報告した。感覚障害は,識別感覚の障害が特徴的であり,要素的感覚はほぼ正常であった。 MRIで,左大脳半球頭頂葉の中心後回上部および内側面と中心傍小葉に限局した脳梗塞を認めた。 頸動脈エコー検査で両側内頸動脈に狭窄性病変がみられ,二次性塞栓症(artery-to-artery embolism)による前大脳動脈皮質枝梗塞が原因と考えられた。 中心後回体性感覚野の病変による大脳皮質性感覚障害は,上肢·顔に分布することが多く,本症例のように,感覚障害が下肢遠位部に限局することはきわめて稀である。 しかし,単肢に限局し,末梢神経障害に起因すると思われる分布をとる感覚障害であっても,大脳皮質性感覚障害もその一因となりえることを診断にあたり念頭におく必要があると考えられた。