【毛細血管内皮細胞を介する心筋脂肪酸代謝の制御機構】—脂肪酸結合タンパク4／5は経内皮的脂肪酸輸送を促進する—

摘要

毛細血管内皮細胞は，循環血液と実質組織間質を隔て，物質交換の境界面として機能する。脂肪酸結合タンパクFABP4?FABP5はメタボリック症候群（肥満，インスリン抵抗性，糖尿病，脂肪肝）を増強する因子として注目されている。我々は，（1）FABP4／5が心臓?骨格筋などの筋型毛細血管内皮細胞に高発現すること，（2）FABP4／5ダブルノックアウトマウスにおいて心臓?赤筋で脂肪酸取り込みが減弱しグルコース取り込みが著しく亢進することを明らかにした。これらは，心臓毛細血管内皮細胞のFABP4／5が血中から心筋?骨格筋間質への脂肪酸輸送に必須であること，脂肪酸輸送障害により代償的にグルコース代謝が亢進することを意味する。本稿では，経内皮的脂肪酸能動輸送という脂質代謝の新たな概念を提唱し，FABP4／5がその重要な役割を担う分子であり，心臓の代謝のみならず，全身代謝にも大きな影響を及ぼすことを報告する。