VHF帯長距離ブロードバンドTD-LTE方式に関する基礎検討

摘要

極めて公共性かつ緊急性が高い業務が求められる災害現場などにおいて，警察，消防，救急医療などの公共機関では機動的かつ確実に音声および映像伝送を行う手段が求められている．こうした背景のもと，地上テレビジョン放送のディジタル化に伴い空き周波数帯となったVHF帯の一部が「安全·安心な社会の実現」のためのブロードバンド自営通信用に割り当てられた．現在，この公共ブロードバンド通信向けの国内標準規格としてARIB STD T-103規格が定められており，都市部だけでなく山間部などの非常に厳しい無線通信環境においても長距離伝送を実現している．しかし一方で無線機の製造コストが高いという問題があり，さらなる普及を進めるためには無線端末の低廉化を行う必要がある．このような背景のもと，様々な公共機関が共同で利用可能な公共ブロードバンド移動通信システムの検討が進められており，その候補の一つして移動体セルラ通信システムで実績のあるTD-LTEの導入が検討されている．しかし，これまでにVHF帯の長距離·マルチパス長伝搬遅延ブロードバンド通信環境における同方式の評価の報告例はない．そこで本稿では，5MHz帯域幅モードのTD-LTEをVHF帯において運用する場合の基礎検討を行う．