日常言語コンピューティング(第２報)－日常言語に基づく計算機資源の管理·実行環境を目指して

摘要

ヒトと他の種をわける大きな違いの一つは，言語に関する知の存在が挙げられる．Deacon[Deacon 97]は，ヒトの脳は言語とともに進化してきており，言語の使用なくしては，ヒトの脳の発達はなかった，としている．したがって，我々が，ヒトにより近い知性を持つコンピュータを実現しようとするとき，言語を使った情報処理を考えないわけにはいかない．筆者らは，ヒトの知性における言語が果たす役割を重要視し，従来の数値や形式的記号論理に基づく情報処理から，日常言語による情報処理を行う「日常言語コンピューティング（Everyday Language Computing）（以後ELC と略記）」という新しいパラダイムを提案している[岩爪 02]．また，このパラダイムの実現形態の一つとして，「日常言語オペレーティングシステム(Language-based Operating System)（以後LOSと略記）」の実現を目指し，研究を進めている[岩爪 02]．本稿では，近未来チャレンジ課題としてのELC の概要，現在までの取り組み，今後の展望や技術的課題について紹介する．