音響異方性を有する圧延鋼板における探傷屈折角のその場推定方法の提案－JIS Z 3060の規定を巡って

摘要

筆者らは先に、音響異方性を考慮した差分法プログラムを開発し、TMCP圧延鋼板の斜角探傷におけ超音波挙動をコンピュータ·シミュレーションで再現した。さらにフェルマーの原理に遡った考察行い、音響異方性を有する試験体における探傷屈折角を、実測可能なエネルギー束の速度から直接定できる計算式を導出した。本報では、JIS Z 3060：2002が規定するSTBとの音速比に基づく探傷屈折角の測定方法に関する検討課題を踏まえて、上記の計算式に基づいた探傷屈折角のその場推定方法を提案した。JISが規定するSTBとの音速比の測定手順に、任意の一つの屈折角における音速のその場測定を加えることで、強い音響異方性を有する圧延鋼板においても高精度で探傷屈折角を算定し、また所与の探傷屈折角を得るための公称屈折角を選定することが可能になった。