封圧環境下におけるAE法による原位置初期地圧測定法の開発

摘要

本論文では，予想される応力値が岩石の一軸圧縮強度と近い場合や対象とする岩石コアが脆弱な軟岩の場合にも，AE法による原位置の初期地圧測定を実現するために封圧環境下でのAE法を検討した。 以下に本研究で得られた成果をまとめる。 （1）封圧環境下での－軸圧縮試験とAE計測を実現するために，小型の特殊な圧力容器を開発した。 （2）田下凝灰岩を用いて，開発した容器を利用した封圧環境下でのAEのカイザー効果検出試験を行った結乳明瞭にカイザー効果が検出され，Ae計測時の圧力容器の影響がAE法の実施等に関して十分無視できる程度であることが分かった。 （3）核燃料サイクル開発機構東濃鉱山から採取された泥質砂岩を用いた封圧環境下での先行応力推定のための模擬実験を実施した結果，設定した応力値に十分近い推定結果が得られた。 推定誤差の平均値は約3.3％，その最大値が約20％,標準偏差が約0.35であった。 以上のようなことから，封圧環境下においてもAE法による先行応力の推定は可能であると考えられる。この方法は,予想される応力値が一軸圧縮強度に近い場合や脆弱な軟岩などの条件に有効であり，AE法による初期地圧推定の適用性をこれまで以上に広げることが期待される。本論文の結果では,試験装置のハンドリングに起因する誤差の影響が大きいが，この問題については，今後の検討により高精度化することは十分可能であると考えられる。 今後の課題としては，封圧値の大きさの先行応力推定結果に対する影響を実験的に確認することや，原位置地圧測定における推定値読み取り基準mの決定指針の明確化などが挙げられる。れらの検討を行うことにより，本論文で述べた手法の実用性がきらに高められ，将来的には実際の原位置での初期地圧測定に紬可能なものへと発展すると考えている。