延性き裂発生に伴って限界付けられる梁部材の塑性変形能力

摘要

本研究では、有限要素法解析を用いた柱梁接合部の部材解析を行い、素材特性·梁断面寸法の違いが梁部材の力学的特性に及ぼす影響を考察した（また、既報で提案した延性き裂発生条件式を用いて、梁部材の塑性変形能力が延性き裂発生に伴って限界付けられる幅厚比区分について考察を行った。 なお、本研究では柱鋼管壁の板厚が十分に厚く、梁ウェブ接合部の曲げ耐力を梁ウェブの曲げ耐力と同等と見なすことができる柱梁接合部を対象に解析を行い、溶接·溶接熱影響部等は考慮に入れていない評価となっている。以下に得られた結果を示す。 （1）特性の異なる素材を用いた梁部材の塑性変形能力を評価する際、素材引張試験より得られる修正補エネルギー比（S?C.E/nσ_y）_0が有効な指標であると考えられる。（2）スカラップ底でのε_(eq)-(3σ_m/σ_(eq))関係は梁部材のウェブ·フランジ幅厚比、ε_(eq)-θ_m/θ_p関係は梁の（Z_(wp)／Z_p）によって決定される関係であり、延性き裂発生に伴って限界付けられる梁の塑性変形能力を把握するためには、梁断面のウェブ·フランジ幅厚比だけでなく、3つ目の無次元量として梁部材の塑性断面係数（Z_p）に占める梁ウェブの塑性断面係数（Z_(wp)の割合（Z_(wp)/Z_p）を考慮する必要がある。 （3）梁部材の塑性断面係数（Z_p）に占めるウェブの塑性断面係数（Z_(wp)）の割合が大きいぼど、延性き裂発生によって塑性変形能力が決定される幅厚比の領域は広くなる。また、塑性変形能力に乏しい高張力鋼ほど、ウェブ幅厚比が大きい領域でも延性き裂発生によって塑性変形能力が決定されることになる。