ばね鋼材の実使用環境及びラボ試験環境から侵入する水素量の推定と昇温脱離式ガスクロで測定される拡散性水素量の解釈方法

摘要

本報告では，その水素侵入量を正確に知るために，以下のアプローチから検討を行った．（1）まず，腐食させた鋼材を，昇温脱離式ガスクロで水素分析をする際に，しばしば見られ，かつ，最近議論になっている300-400°Cでの水素ピークについて，拡散性水素ではないことを問題提起する．（2）次いで，よく行われる耐遅れ破壊評価の試験方法で用いられる水素チャージにおける侵入水素量を論じる．（3）特に，腐食試験による水素チャージ方法や，乾湿繰返し試験時に見られる，水素量について，拡散性水素及び非拡散性水素以外に見られる300-400°C域の水素ピークと絡めて報告する．（4）最後に，水素脆化（遅れ破壊）に関わるとされる，拡散性水素の定義として，昇温脱維式ガスクロで測定される水素のうち300-400°C域を中心とする水素ピークを取り除いた上で，従来説に沿って，約200°C以下の水素量を指すべきことを述べる．