水素昇温脱離分析法によるボイラー配管溶接継手部のクリープ損傷評価

摘要

ボイラー配管に用いられる高Crフェライト系耐熱鋼の溶接継手部において，溶接熱影響部（HAZ）の母材側においてボイドや微小き裂が早期に発生し破壊に至るType IV損傷が大きな問題となっている。その詳細なメカニズムは未だ解明されておらず，その検出·評価についても未だ効果的な方法が確立されていないのが現状である。本研究では，Gr.122鋼溶接継手のクリープに伴う水素放出特性変化の要因を明らかにし，水素昇温脱離分析法を余寿命評価法として確立することを目的に，データ拡充をとおして溶棒継手部の局所領域における水素放出特性を詳細に調べた。また，スモールパンチ（SP）クリープ試験特性と水素放出特性の関係についても定量的に検討した。その結果，HAZにおける水素放出特性変化がもっとも顕著であり，損傷はHAZで優先的に発生·蓄積していることが確認された。また，外表面からの距離が5mm程度といった特定の位置において損傷が優先的に蓄積していた。さらには，水素放出量とSPクリープ試験で得られた寿命消費率の間には良好な相関関係があり，水素昇温脱離分析法が余寿命評価法として有望である可能性が示唆された。