老朽化設備の超音波全面測定による肉厚管理

摘要

国内の産業設備の多くは建設後40年以上を経過し，設備の老朽化対策が重要課題となっている。保安上の大きな課題の1つが，最近の漏洩等事故の主な原因である腐食等による構成材料の劣化対策である。構成材料の劣化現象は，減肉劣化，割れ状劣化，材質劣化に大別できる。老朽化設備における代表的なものは，炭素鋼設備の腐食減肉である。炭素鋼は，設計時よりある程度の腐食を許容している場合が多い。しかし，設計の基本となる平均腐食速度は十分小さくとも，長期間の使用により腐食が局在化し，部分的に大きな速度で進行する場合がある。設備管理上は，この局部腐食部位と速度を把握し，漏洩等を未然に防ぐ必要がある。しかし，一般に炭素鋼の使用範囲は膨大であり，特に目視による網羅的な検査が困難な屋外タンク底板の裏面やジャケット付圧力容器のジャケット側および配管内面などは，その特定が極めて難しいことになる。このような背景に基づき，著者らは，タンク底板や反応器等の静止機器の超音波による全面の肉厚測定装置を開発，実用化してきた。また，最近では配管用の面的な検査装置も開発した。本報では，これらの全面肉厚検査装置の概要を述べるとともに，その肉厚管理への適用事例について紹介する。