自動車用ピストンリングの技術開発動向

摘要

自動車用エンジンの高効率化の取組みとして、燃焼方式の改良および各部品間の摩擦損失低減技術の開発が継続的に行われており、現在ではガソリンエンジンで熱効率が40%程度まで向上している車種も存在する。エンジン部品の一つであるピストンリング（以下リング）については、リングとシリンダー間の摺動による摩擦力を減らすことで高効率化に貢献しており、さらなる高効率化のためにリングの張力、外周形状、エンジンオイル（以下オイル）との組合わせなどの研究が行われている。この中でも、リング張力を下げることによる摩擦力の低減効果が高いことが知られているが、リングの張力を下げることにより、オイル消費量が増えるという問題がある。オイル消費は排出ガス中のPM（粒子状物質）、PN（パティキュレートナンバー）の排出量に影響を及ぼすため、「ユーロVI」（欧州次期排出ガス規制）などの基準を満たすためにもオイル消費量のコントロールが重要な課題である。そこで本稿ではリングに関わる最近のオイル消費の研究事例について紹介する。