誘電泳動インピーダンス計測法による細菌誘電特性と細胞膜活性状態及び流量依存性の相関検証

摘要

これらを踏まえ著者らは，検体菌の生理活性評価を行う基礎段階として，加温処理を施した大腸菌を用いて，周波数に対するDEPIMの処理温度依存性を精査した．電極間コンダクタンスの経時変化（△G）は，低周波数において処理温度の影響を受けることがわかり，その解析結果から加温負荷菌の誘電特性変化は，導電率の変動が支配的であると推察した．さらに各蛍光染色法を用いて，膜損傷および代謝活性度の処理温度依存性を解析し，DEPIM法によるAGとの相関を検討した結果，単に細菌の生育活性状態だけでなく，菌の生死，膜損傷および呼吸活性の複合的要因が△G変動に反映していることが判明した．本報では，さらに新たなDEP条件，処理温度条件及び菌染色法分析手法を導入し，△Gの変動要因を精査した．その結果，加温処理条件及び流量条件を変動させることにより，DEPIM計測時の菌体内状態，細胞膜活性状態及び生死菌の混合状態は，△G変動に対して複雑な影響を及ぼしていることが明確になった．さらに蛍光分光法を用いることにより，△Gと大腸菌の生物学的変化との相関性を定量的に評価することができた．本研究成果は，DEPIM法を導入することによって，細菌に対する実用的な計測システムの構築が可能であることを示唆している．