スライディングモード制御による加熱炉の温度追従制御

摘要

鉄鋼業におけるウオーキングビーム式連続加熱炉の目的は，鋼片（以後，スラブと呼ぶ）を連続的に炉内に装入して抽出側に向かって搬送し，抽出までに上位コンピュータから指示された所要の温度（以後，目標抽出温度と呼ぶ）まで焼き上げることにある（Fig.1参照）．スラブの温度が目標抽出温度を越えれば炉内から抽出可能となり，圧延などの次工程に運ばれる．加熱炉のためのプロセスコンピュータは，さまざまな計算を行なっているが，一般には炉内の温度を制御するために必要な5つのモデル計算を行なっている．①炉内に取り付けたいくつかの温度計による測定値から，各スラブ周囲の雰囲気温度を計算する（以後，炉内温度計算と呼ぶ）．②炉内温度計算の結果から，スラブの内部温度を計算する（以後，スラブ温度計算と呼ぶ）．③スラブが抽出される時の温度を予測計算する（以後，抽出温度予測と呼ぶ）．④スラブが所要の温度になるように，スラブ周囲のあるべき雰囲気温度を計算する（以後，雰囲気温度計算と呼ぶ）．⑤炉内の各スラブの雰囲気温度計算結果から，炉内の目標温度（バーナーの燃焼制御の目標値となる）を計算する（以後，炉内設定値計算と呼ぶ）．