第44回教育セミナー（2019）·「美しさの本質を考える」実容医療 new horizon-幹細胞への期待-

摘要

筆者が，太陽紫外線が皮膚の老化を著しく促進することに興味を抱き，紫外線対策の重要性を意識したのは今から約50年前の1971年頃である。当時，太陽紫外線が皮膚の細胞遺伝子DNAに独特の傷をつけ，その修復に誤りが起きると遺伝子に変異が起きることは，米国や西欧および日本の基礎学者は理解していたが，わが国では，太陽紫外線が皮膚がh発症の主原因であることは一般国民には知られていなかった。限られた皮膚科医師と紫外線に興味を持つ基礎科学者だけが太陽光線の皮膚への有害性を理解していた。シミやシワが加齢とともに発症することは誰でも知っており，太陽光線が主要な原因であることは想像されてはいたが，シミやシワ発症の分 子レベルの機序については，当時まだほとhど知られていなかった。1980年代に入り，すでに予測されていた冷媒等に広く用いられていたフロンガスによるオゾン層破壊に伴う地球上の太陽紫外線Bの増加に伴うDNA損傷の増加とそれに伴う皮膚がhの急増が世界的に懸念され，わが国でも紫外線対策の重要性が議論され，実行に移され始めた。1985年頃から，それまで推奨されていた日焼けは，シミ·シワなどの光老化を誘発し，また皮膚がh原因となることが国民にも広く理解され始め，太陽紫外線対策の必要性が広く認識されることとなった。シミやシワのない若々しく健康な皮膚を維持することの重要性が，日本経済の発展と軌を一にして，特に女性の間では一般的な考えとして定着した。