自己注入同期法によるマイク口波電圧制御発振器の低位相雑音化技術

摘要

外部から印加する制御電圧によって発振周波数を制御するマイクロ波電圧制御発振器(Voltage Controlled Oscillator： VCO)は，通信装置及びレーダ装置などの局部発振源として用いられており，各装置の通信品質や探知性能の向上のため，低位相雑音化が求められている。VCOでの低位相雑音化手法として，共振器の高Q化がある。ただし，発振周波数可変範囲が狭帯域となることや，共振器による損失が大きくなって発振条件を満足できなくなる問題がある。ほかの低位相雑音化手法として自己注入同期法がある。これは発振器の外部に帰還回路を備え，自らの出力を移相させて発振器に注入することで位相雑音を低減する手法である。ただし，これをVCOに適用すると移相量が固定の帰還回路では発振周波数可変範囲が狭帯域となる。また帰還回路での損失によって低位相雑音化の効果が小さくなる。そこで，発振周波数可変範囲を維持したまま位相雑音を低減するために，帰還回路内に元々の発振器（主VCO)とは別の帰還用VCOを設けて帰還移相量を可変としたリング型自己注入同期VCOを提案する。0.18μm SiGe (シリコンゲルマニウム）- BiCMOS (SiGe Bipolar Complementary Metal Oxide Semiconductor)プロ セスを用いてC帯で試作した結果，VCOの発振周波数全範囲にわたり位相雑音は約6 dB低減し，この構成の有効性を確認した。