光ファイバ型2色温度計を用いたワイヤ放電加工におけるワイヤ電極温度計測

摘要

ワイヤ放電加工における問題のひとつとして，加工中のワイヤ電極の断線が挙げられる.この断線の原因としては，ワイヤ電極温度の上昇による引張強度の低下が考えられる.ワイヤ放電加工においては，加工中のワイヤ電極の振動を防ぐためにワイヤに張力が付与されるが,放電の熱ジュール発熱によりワイヤ電極の温度が上昇することで引張強度が低下し，張力に耐えられずに断線に至ると考えられている[1-2].竹下ら[2]は，放電による熱流束やワイヤ電極の抵抗によるジュール発熱を考慮してワイ電極の平均温度を計算し，加工中のワイヤ電極の平均温度は100°Cから200°C程度であると報告している.このようなワイヤ電極の断線現象を解明するためには，ワイヤ電極の温度計測が重要であると考えられる.しかし，ワイヤ電極の直径が小さいこと，ワイヤ電極が常に走行していること，加工液に浸漬した状態での加工であるといった理由により，熱電対や輻射温度計を用いた従来の温度計測法による温度計測は困難であった.このため，上下の給電子を通って流れる放電電流と上下給電子間の電圧を測定してワイヤの抵抗値を求め，それによりワイヤ電極の温度を計測する方法[3,4]や，放電点検出の検出感度変化を利用してワイヤ温度を計測る方法などが提案されている[5]. 本研究では，本研究室で開発した光ファイバ型赤外線輻射2色温度計[6]により，ワイヤ放電加工におけるワイ電極温度計測を試みている.前報[7]において，この光ファイバ型2色温度計によってワイヤ放電加工におけるワイヤ電極温度の計測を試みたが，加工中のワイヤ電極温度計測には至らなかった，本報では，温度校正方法の改良と，ワイヤ電極温度計測を再度試みた結果を報告する.