小笠原諸島父島におけるイシガキダイの親魚養成と採卵

摘要

近年，小笠原諸島父島では種苗生産したイシガキダイOplegnathus punctatus稚魚を用いての養殖事業が開始されたが（河西、川辺2006），当地において本種の種苗生産技術や養成技術を確立するためには，まず良質卵の大量確保に関する知見が必要である。 本種の採卵については，近畿大学が1970年に全国で初めて成功し（原田ら1979），その後，鹿児島県栽培漁業センター（富安ら1994，1995）では毎年安定的に1億粒以上を採卵するなど，本土海域での知見は集積されているが，亜熱帯海域における採卵事例はこれまで知られていない。そこで，著者らは2002年に小笠原諸島父島の岩礁域で釣獲したイシガキダイ天然魚を約1年間養成して，自然産卵による本種の採卵を試みた。