野生動物と人間社会の付き合い方 一統合的な野生動物管理システムの構築に向けて一

摘要

野生動物は古代から重要な生活資源であつたが，弥生時代になつて本格的な水田稲 作農業が始まると野生動物は食糧資源であるとともに農業被害をもたらす二面性を持 つようになった。森林を切り開いて新田開発が盛hに行われた江戸時代には，シカ、 イノシシの獣害が激化し，全国の農村のいたるところに「しし垣」が作られたほか， 火繙銃は農具として獣害防止に用いられた。今曰，東北地方の多くの地域ではシカゃ ィノシシの分布が空白となつているのは，江戸時代に組織的で大規模な駆除が実施されたためである。また同時代には対馬において「猪追詰」戦争によって8年かけて3 万頭のイノシシが駆除されて根絶されている。