三重県の落葉広葉樹林における二ホンジ力の採食 による下層植生衰退の広域的評価

摘要

近年，二ホンジカ（以下シカ）の分布域拡大お よび個体数増加に伴い苗木の食害や剥皮害の増加(小泉2009)だけでなく ，過度の採食による自然植 生への影響が危惧されている（梶'飯島2017；前迫、 高槻2015 ； Suzuki et al. 2008 ； Takatsuki 2009 ；湯 本-松田2006)。とくに，森林の下層植生の衰退は. 表層土壌の流出（例えば，初ら2010;内田ら2012), 生物多様性の低下（例えば，片桐2017 ；柴田-日 野2009)などの森林のもつ公益的機能の低下を招 く恐れがある。このため，シ力の個体群や被害の状 況をモニタリングし，科学的にシカ個体群を管理していく特定鳥獣管理計画が多くの都道府県で策定さ れている（宇野ら2007)。農林業被害については， 被害金額等を指標として継続的なモニタリングが行 われてきたが，森林生態系被害の把握については広 域的に評価可能な手法が確立しておらず，シ力が過 密度;!犬態で生息している一部の地域においてのみ詳 細な被害調査が行われているに過ぎなかった。